第7回 韓国映画と日本映画の違いについて シーズン1「本当に知りたい韓国映画」#7

By Professor Ken with Tao and Madoka
illustration By LEE Fani

あの〜気になったんですけど、そもそも韓国映画って日本映画とどう違うんですか?

僕は顔も似てるし、映画も似てると思うんですけど

全然違うじゃん。バカじゃないの

似ていて当たり前だよ。韓国映画は日本映画の一部だったから

えっ!?

ちょっとおさらいをすると、昨年が韓国映画100年と言われる所以は、1919年に韓国で初めて『義士的仇討ち』という映画が製作されたことから数えて100年目に当たるからなんだ。


そして1919年といえば、韓国いや朝鮮半島全体は日本の植民地支配下にあった。映画はスタートから日本の植民地下で誕生し、日本を経由して入ってきた文化だった訳だよ。


実は初期の韓国映画は日本人が製作に関わっているケースが多いんだが、それは映画館の経営者も機材の所有者も技術者も殆どが日本人だったからなんだ。
だから韓国映画界では今でも日本語が業界で通じる。


スタジオで照明を吊る渡しを「二重」って呼んだり「立ち回り」とか「切り返し」って用語は通じるし、変な言葉としては韓国で監督デビューすることを、あの人はあの作品でやっと「一本」だって言ったりする。

柔道みたいですね(笑)

(笑)ただ微笑ましい逸話だけじゃなく日本は、植民地化政策を推し進める国策に映画を利用した歴史がある。


 1942年に朝鮮総督府は数々あった映画会社を解散させて、朝映(ちょうえい)の一社だけにしてしまった。映画は全て日本の国策に適った映画だけを許可するとしたんだ。代表的な映画には『君と僕』や『志願兵』『半島の春』などの作品がある。


43年の『朝鮮海峡』に至っては、セリフは全部日本語になってしまった。まあ、暗くなるから、これ以上内容を説明するのは止めておこう。

もっと共通点はないんですか?

当然、歴史的にも地理的にも深い結びつきがある日本と韓国はメンタリティが近いという特徴がある。
 ただ類似点より違いを並べたほうがより解りやすいと思うから、幾つか挙げてみよう。


 まず、映画業界を代表する組織でいうと、日本では映連と呼ばれる大手映画会社4社が集って作った日本映画製作者連盟という団体がある。統計を発表したり、東京国際映画祭を運営したり、アメリカのアカデミー賞にアプライする代表作を選んだりする一般社団法人だ。その関連団体として映画館の団体の全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)や映画関連企業35社が属する映団連(映画産業団体連合会)がある。これらは管轄する監督官庁との折衝を行う機関だ。まあ、基本的には民間企業の組合的な要素が強い。映連の会長は代々、メジャー映画会社の社長が務める慣例のようだ。


 一方、韓国には映画振興委員会(KOFIC)という組織がある。この団体はフランスにおけるCNC(国立映画センター)に近い、国の文化体育観光部傘下の特殊法人だけど、日本で言えば文化庁と文部科学省直轄って事かな。で、映画発展基金の管理運営を通じて映画制作の支援、配給、流通の支援、海外市場の開拓と交流、韓国映画アカデミーの運営、撮影所の管理、等、映画行政に関わる全てを管轄する役割を担っている。完全な国営の特殊法人なんだ。このボードメンバーは映画プロデューサー、監督、俳優、大学教授、評論家らで構成されていて任期は2年間と決まっている。

映画発展基金って何ですか?

フランスでも韓国でも採用している特別基金で、映画の入場料金から数%を映画支援事業に当てるというシステムだ。例えばフランスではフランス映画を見ようがアメリカ映画を見ようが映画館収入の一部が、消費税や付加価値税とは別に映画発展基金に回されるから、映画界は制作や配給や教育に掛かる費用を自分たちでまかなえる訳だ。


 こういった制度が機能しているから、国における映画支援の在り方もかなり違う。韓国の年間400億円に対して、日本は文化庁と経産省の映画助成金を足して約50〜60億円程度だと言われている。韓国は文化政策そのものが違うって、日本の映画人がよく愚痴ってるけど、それはその通りだと思うね。

日本はもっと支援を増やせばいいんじゃないですか?

まあ、韓国の成功を見て、日本政府も経済産業省が主導してVIPO(映像産業進行機構)って団体を2004年に立ち上げて、クールジャパンの名の下で支援を始めたんだ。でもこの団体は映画、放送番組、アニメ、ゲーム、音楽を一色単にコンテンツって括って海外に売っていこうという趣旨だから、方向性が不透明なんだ。


業界団体とどう紐付いてるのか、文化庁との関係や役割なんかも整理されていない。そもそも誰がトップに立っている組織なのかもよく判らない。

やっぱ韓国が羨ましいですね〜

でも、権利と義務は表裏一体だと思う。大きな予算を掛けて行われる映画製作でも映画祭の開催でも、韓国ではそれを行う担当者や責任者に対する責任論が常に付きまとう。大きな権限を持っているから、周囲のチェック機能も高いんだろう。


 また時の政権の意向によって、映画振興予算の配分やトップ人事も左右されるから、映画人は常に政治との距離や、世論の評価を意識して行動する必要がある。スキャンダルなんか命取りだ。税金を扱うわけだから、その辺は日本よりそうとう厳しいと思うよ。ある意味、日本の映画団体は国に映画への介入をさせない為に独立性を保っているとも言えるんだ。


一言でいうと東アジアの二つ国は、方やアメリカ流のビジネス重視の文化政策を選択し、方やヨーロッパ型の潤沢な振興予算を柱にした文化政策を行っているという事かな〜。

いいことばっかりじゃないんですね〜

そうだね

【Amazon.co.jp限定】パラサイト 半地下の家族 [DVD] (Amazon.co.jp限定;スペシャルDVD+メーカー特典;オリジナルクリアファイル[A4サイズ])

「パラサイト 半地下の家族」のDVDがついに発売開始!

特典付きDVD(Amazon.co.jp限定;スペシャルDVD+メーカー特典;オリジナルクリアファイル[A4サイズ])を今すぐ予約!

ソーシャルで共有
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です