interviewer:Madoka Tomosaki
初めまして藤本信介です。ケンさんから聞いてますよ。
──今日はよろしくお願いします。
私、韓国映画に出たくて今日お会いできるのをすごく楽しみにしていました。
どれくらい出たいんですか?
──どれくらい出たい?韓国映画がホントに大好きで韓国ドラマも。韓国の文化がとても大好きで、映画を観ようと思ってもいつも韓国映画を選んじゃう程なのでその世界に入りたいな、と思いまして。
まだ、韓国映画に日本人が出演した例ってそんなに多くないと思うんですけど、
韓国人は日本のドラマとか映画も大好きで日本の役者さんにも興味があるから、韓国映画では今後もそういう役が確実にある。
──日本人の役ですか?
はい。だからそこはしっかり語学も勉強して、コツコツやっていけば可能だと思います。
──え?そうですか?嬉しい。(笑) 何で、韓国に行かれたんですか?
最初は交換留学ですね。大学の交換留学で1年だけだったんですけど、行ってみたらすごく自分に合うなと思いました。
──韓国が、ですか?
初日からもう楽しくてしょうがないくらい。これは1年間楽しいぞと思って、ホームシックもなく楽しく過ごしました。
──こっち(ある部分)は日本が良いとか、そういうのもあんまり無かったんですか?
無かったです初日から。何かフィーリングが合ったんですね。全てが楽しかった。あと交換留学がすごく良いのは、勉強よりも遊んでナンボみたいなところがあって、遊んで友達いっぱい作って旅行して、酒飲んで好き勝手やることが交換留学の目的だと自分は思っていたので、それはしっかりやりました。
──遊んで?
ええ、遊びまくりました。
韓国では半地下に住んでた
──韓国で半地下に住んでたって聞いたんですけど。
住んでましたよ。
──あの『パラサイト 半地下の家族』みたいな感じですか?
そうですね。『パラサイト』の場合はまだ光が入ってたけど、ウチは光もゼロ、暗闇ですよ。
窓はあったから風はちょっと入って来るんですけど、窓の外10cmのところに隣の家みたいな感じだったから、隣の声がしょっちゅう聞こえたし、窓から外を覗くこともできないタダの窓で、まっ暗。
『パラサイト』で共感したのが、便所(トイレ)が個人的なスペースというか、タバコ吸ったり、憩いの場だったじゃないですか。
ウチも便所だけは午前中に直射日光じゃないですけど、光がちょっと入るところだったから、便所が好きって言ったら変ですけど、『パラサイト』見た時に、あ、便所〜って思いました。
──中々『パラサイト』の半地下に共感する方はいらっしゃらないと思うんですけど。(笑)
知らないですもんね、みんな。
──知らないです、ビックリしました。
『パラサイト』は窓の外に歩いてる人の足が見えるけど、ウチは半地下でも坂道にある家だったので、片側は完全に地下で窓の外に人を感じることもなく。『パラサイト』はそれでも恵まれている半地下だと思いましたね。
──半地下の中でも? じゃあ『パラサイト』のお父さんの匂いっていうのは想像がつくんですか?
つきます。やっぱり日本でも室内干しの匂いってあるじゃないですか。あれに通じるところが。
──湿気というか。
湿気。特有の匂いがあります。
──その匂いだったんですね。どういう匂いなのかと気になっていたので。
行ったことあります?半地下とか韓国で友だちの家とかで。
──半地下はないです。おウチを探す時に半地下は家賃が安いのですか?
安いです。どこにでもあります、半地下(物件)は。
──じゃあ、もし私が韓国に行って役者をやろうと思ったら最初はお金がないから、半地下に住むってことになるかもですね?
そうですね。でも絶対オイシイと思いますよ、印象的に。
──半地下に住んでるんだ、って。
半地下に住んでるのはネタにできると思うんです。外人なのに、女優さんなのに大変だなって興味をしめしてくれて、協力してくれる人もいるから、あえて半地下を選んだほうが。 別荘イコール半地下みたいな。人が来る時は半地下に呼ぶのがイイですよ。
──自分の家だよって言って?(笑)
風は入るけど太陽はないの、っていう自慢とか。『パラサイト』を私は理解できます、ってアピールも出来ると思います。ぜひ!紹介しますよ。
──良い半地下を、ですか?
良い半地下探しておきます。
──水没とかするんですか?
水没は、自分がいた時はなかったです。けど、まず水没しますよね、雨降ったら。すぐに水没しますよね。
──住まれていた半地下はどこのエリアに?

──そうですか、残念…
ああいう古い町の良さがどんどん無くなって、(住んでいた)半地下もそこのエリアも無くなりましたけど、半地下は半地下でアンダーグラウンドな楽しみもあると思います。まだ地下じゃないから良いですよね? 半分地下。一応、風も感じられる、って考えたら素晴らしくないですか?
──そうですね、地下よりはいいですね。 携帯の電波とかは?(笑)
ウチは届きました。太陽はないけど電波は来ました。
──でも私『パラサイト』観て不思議だったのは、携帯は持ってるんだ、Wifiで使える携帯なのかなって。
そうですね、韓国はネット社会だから、携帯は日本より繋がります。
──Wifiは入ることになってるんですね。ちょっと半地下行ってみたい。
自慢できますよ。半地下に住んでます、って。
──私、韓国映画に出たい目標があって、パク・チャヌク監督に直接会いに行ってみるのもあると思うんですが、映画観ていて男性の役が多いイメージがあって。これからは日本の女性の役もどんどん増えて来る可能性はあるんですか?
可能性はもちろんあります。日本と韓国が近いから物語を作る上でも、韓国人以外のキャラクターを作る場合に一番作りやすいキャラクターだと思います。また韓国人は日本のジャパニーズ・ビューティーみたいなイメージが好きなので、日本女性のキャラクターは無くなることはないと思います。なので韓国語の勉強はしっかりやるべきです。
──いまシナリオで勉強しているんですけど、台本とかト書きだったり台詞だったり。 テキストだとなんか教科書みたいな言葉しか覚えられないので、そういう勉強方に変えたんですけど、 藤本さんがやられた良い勉強法ってありますか?
住んでいたから生活の全てが勉強だったので恵まれた状況でした。それにしても、シナリオで言葉を覚えるのはすごく良いですね。
──ちょっと悪口が多いので、その悪口ばっかり覚えちゃってるんですけど。(笑)
良いですね。半地下に住む、悪口のうまい、ぶっ飛んだ役がやりたい、ってことだけでも個性ですよね。
──じゃあ、引き続きそのシナリオで頑張ります。
あと最近の、NETFLIXとか配信系は韓国語字幕とかも選べますよね?あれ、すごく良い勉強だと思うんです。聞き取りながら目でも追うのは昔にはない勉強方法ですよね。 ドラマを見るにしても耳だけだとすごく難しくて集中力も続かないですが、目でも一緒に勉強する、目と耳で勉強する、そして知ってる単語があったらボソッと言う。一度に三つできる勉強方法って魅力的だと思います。──それは実践してみようと思います。
日本人で韓国で女優、俳優やりたいという人はそれなりにいると思うんですけど、そうやって自然な韓国語を喋る人は少ないと思います。役者の演技トーンで勉強するのは誰にも真似できないことだし、まだやっている人も少ないと思うので是非やるべきです。
例えば方言、韓国の方言の演技が出来ますって、外人がやってみたらインパクトがあると思いますよ、かなり頭に残ると思います。例えばちょっとやんちゃな悪口とかも、ちょっとやってみて、って言われた時にパパッと出るようにしておくと良いと思います。
やっぱりすぐに覚えてもらう、すぐに頭に残るようにしてもらうのが重要だと思うので。そこで半地下に住んでます、って言うのも絶対忘れられないポイントですよね。
──これはもう私は半地下に住まなきゃいけないんですね。
そうです。半地下といえば、みたいな。(笑) 他の人が住む前に住んだ方が良いんじゃないですかね?『パラサイト』にあやかって。
──そうですね!
【藤本信介 さんプロフィール】
1979年金沢生まれ。2001年、富山大学在学中に韓国国民大学に交換留学生として留学。 留学中、韓国映画に魅了され、2003年に再び渡韓し韓国映画界に飛び込む。 その後、韓国映画・日韓合作映画の助監督として多数の映画製作に携わる。
参加した作品には『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)、『悲夢』(キム・ギドク監督)、『マイウェイ 12,000キロの真実』(カン・ジェギュ監督)、『裸足の夢』(キム・テギュン監督)、『蝶の眠り』(チョン・ジェウン監督)、『美しき野獣』(キム・ソンス監督)、『ノーボーイズ・ノークライ』(キム・ヨンナム監督)、『道〜白磁の人』(高橋伴明監督)、『アイアムアヒーロー』(佐藤信介監督)など。
また、韓国のケーブルTV「チャンネルW」の番組「今日の日本(오늘의 일본)」「アルバtalk talk(알바talk talk) 第1回目 第2回目 第3回目」に出演するなど様々な活動を行なっている。